技術情報
2色成形とエラストマーの利用
- 材料
- 成形
2色成形では軟質素材である熱可塑性エラストマーと硬質樹脂を組み合わせて機能性やデザイン性を付与することがあります。エラストマーの材質によって得られる機能や効果が異なります。本コラムでは各種エラストマーの素材紹介と当社の2色成形の実績をご紹介します。
熱可塑性エラストマーの例
TPS(スチレン系エラストマー)
スチレン系エラストマーTPSは次のような特性を持っています。
- 耐熱性、耐寒性に優れ、様々な使用環境に耐える
- 架橋剤、可塑剤、ハロゲン系難燃剤などの環境負荷物質は含まれない
- 熱履歴による劣化が少なく、リサイクル特性に優れる
スチレン系エラストマーは熱可塑性エラストマーの中では価格面では最も安価なことが多い素材です。しかし、TPSは相性よく融着する硬質樹脂が少なく、採用は難しい素材と言えます。
TPO(オレフィン系エラストマー)
オレフィン系エラストマーTPOは次のような特性を持っています。
- 非架橋、低品質グレードでは強度が低く、圧縮永久歪が大きく、非極性の油、溶剤に膨潤する
- 溶融粘土の温度依存性が小さく、加工時の粘土が高いなどの短所もある
オレフィン系エラストマーは当社が2色成形で得意にしている素材の1つです。樹脂部品で採用されやすいPP(ポリプロピレン)と非常に相性がよく、高い融着性を発揮します。そのためシール性、グリップ性、デザイン性用途など様々な利用用途に活用できるエラストマーになります。
TPEE(エステル系エラストマー)
エステル系エラストマーTPEEは次のような特性を持っています。
- ポリエステルの強靭な性質を有する
- 耐荷重性が大きく強靭である
- 繰返し疲労特性の優秀な数少ないTPEである
- コストが高い
TPEEも採用しやすいエラストマーの1つです。TPEEはABSやPCといった硬質樹脂と相性が良く高い融着性を示します。高い性能を発揮する素材であるため、TPSやTPOと比較して材料価格は高くなる傾向にあります。
TPU(ウレタン系エラストマー)
ウレタン系エラストマーTPUは次のような特性を持っています。
- 引張強さ、引裂強さ等の機械的強度が高く優れている
- 傷がつきにくく、耐摩耗性に優れている
- 圧縮永久歪みが小さく優れている
TPUは弊社では採用実績の少ない素材ですが、機械的強度や摩耗性に優れている素材になります。また相性の良い硬質樹脂も存在しており、採用の可能性が考えられる素材の1つです。
PAE(ポリアミド系エラストマー)
ポリアミド系エラストマーPAEは次のような特性を持っています。
- ナイロンの強靭な性質を有する。
- ナイロンと同様に実用的な成形加工性に優れている。
- ゴム弾性がやや乏しい。
- コストが高い。
PAEはアミド系エラストマーなので、硬質樹脂であるポリアミドと高い融着性を示します。強靭な性質を有しますがコストの高い素材ですが、2色成形ではポリアミドとの融着性は示しますが、それ以外との融着性は確認が必要な素材となります。
2色成形のエラストマー利用で得られる効果
シール性
エラストマーの利用で得られる効果としてシール性があります。従来は硬質樹脂と発泡品(スポンジ)やフェルトを貼りつけて止水性を得る方法もありましたが、2色成形を活用して発泡品やフェルトをエラストマーに置き換えることが可能です。
置き換えることにより、組立工数の削減、部品管理工数の削減が可能です。また、硬質樹脂との貼り合わせ時に粘着テープや粘着剤を使用するため、硬質樹脂に粘着成分が付着し、使用後に硬質樹脂をリサイクルすることが難しい課題がありました。2色成形を活用することで粘着成分を剥がす工程が削減でき、環境課題にも対応することが可能です。
グリップ性
エラストマーの利用で得られる効果としてグリップ性があります。エラストマーの軟質特性を活かしグリップ性、滑り止め性を得ることが可能です。
デザイン性
エラストマーの柔らかい質感を活かすことでデザイン性を与えることが可能です。金型にシボを入れることで皮のような質感を与えたり、まるで塗ったかのようなステッチ加工を施すことが可能になります。
2色成形でエラストマーを利用した具体例
この項目ではエラストマーを利用した2色成形の具体例を素材の組み合わせ別でご紹介します。
PP×TPO
PPとオレフィン系エラストマー(TPO)の組み合わせはよく採用される組み合わせです。
シール性やデザイン性を発揮することができます。
PA×TPO
ナイロンとオレフィン系エラストマー(TPO)を組み合わせた例です。ナイロンの強靭性とエラストマーのグリップ力を兼ね備えた製品です。ナイロンと融着するエラストマーは限られており、融着が可能なエラストマーも当社で選定致しました。
まとめ
2色成形において、硬質樹脂と軟質樹脂(エラストマー)を組み合わせることによって機能性、デザイン性を与えることはよくとられる方法になります。弊社では様々な大きさ、形状での2色成形の実績があります。また、材料の組み合わせについても弊社のノウハウと弊社保有の試作型による確認が可能なため、量産前に安心して材料選定を実施いただくことが可能です。
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