技術情報
剥離しない2色成形のポイント
2色成形は、1つの製品に異なる色や材質を組み合わせることで、デザイン性や機能性を向上させる技術です。しかしその組み合わせによっては剥離が発生しやすいという課題があります。剥離を防ぐためには、材料の選定とその組み合わせに関してのノウハウが不可欠です。
材料の組み合わせと相性
2色成形において、最も重要なのは材料同士の融着性です。当社では、長年の経験と実績に基づき、材料の組み合わせに関しての知見を持っています。よく使用される材料の相性は以下の表に示す通りです。

一般的な傾向として、結晶性樹脂同士は融着しにくく、剥離しやすい性質があります。これは、結晶性樹脂が規則正しい分子構造を持つため、分子間の結合が弱くなりやすいからです。特にポリエチレン(PE)やナイロン(PA)などは、この傾向が顕著です。ただし、例外としてポリプロピレン(PP)は、他の結晶性樹脂よりも融着しやすい特性を持っています。
一方で、非結晶性樹脂は分子構造がランダムであるため、分子間の結合が強く、融着しやすい特徴があります。代表的な非結晶性樹脂には、アクリル(PMMA)やポリカーボネート(PC)などがあり、これらを組み合わせることで、剥離のリスクを大幅に低減できます。
熱可塑性エラストマーとの組み合わせ
さらに、2色成形では軟質材料である熱可塑性エラストマー(TPE)との組み合わせも重要です。TPEは、ゴムのような弾力性とプラスチックの加工性を併せ持つため、グリップ部分やシール部分に多く使用されます。しかし、TPE同士や他の樹脂との組み合わせにおいても相性があります。例えば、TPOとPPの相性は良好で、強固な融着が期待でき当社でも採用事例が多い組み合わせです。
TPEとナイロンのような結晶性樹脂の場合、剥離のリスクが高まります。そのため、当社では、各材料の組み合わせごとに最適な成形条件や接合技術を確立し、高品質な製品を提供しています。
成形条件の最適化
材料の選定だけでなく、成形条件の最適化も剥離を防ぐ重要な要素です。温度や圧力、冷却時間など、わずかな条件の違いが融着性に大きく影響します。特に、2色目を射出する際の温度管理は、1色目の樹脂との融着性を左右するため、精密な制御が求められます。
あえて融着しない材料を使用する例
基本的には2色成形においては融着性のある材料を使用する想定ですが、あえて融着しない材料を使用する場合があります。材料の収縮率の違い、融着性のない性質を使用して組立工数のみ削減した技術提案事例がございます。
製品事例紹介
コーヒーメーカー用ウォータータンク

本製品は家電のコーヒーメーカーで使用されるウォータータンクで、
外側と内側の2層構造となっており、内側の透明部を目盛りとして活用しています。
製品サイズが長手方向に200mと比較的長尺な製品で、2色一体成形は保有設備が限られます。
しかし当社では、製品長さに対して、抜き勾配をほぼ設けずに成形すること出来ますので、
キレイな直方体の成形品を製作することが可能です。
電動ドライバー用ハウジング

本製品は産業機械向けの電動ドライバーの取手になります。
重量物の筐体として衝撃性に優れる硬質材と、電動ドライバーを手にもって使用する際の
グリップ性に必要な軟質材を一体成型で製造した部品になります。
大型2色成形.comの2色成形の特徴とは
50mm角程度の小型部品~500mm角の大型部品や1,000mmの長尺部品まで幅広く対応
当社は、50mm角程度の小型部品から、500mm角の大型部品や1,000mmの長尺部品まで幅広く対応できます。特に、小型精密機械の部品などで必要とされる±0.03~0.05mmの寸法精度や、1000分台での精度要求にも応えられる技術力を備えています。
複雑な形状や高い寸法精度が求められる部品でも、2色成形技術で安定した品質を提供できる点が強みです。さらに、異なる素材の特性を活かした一体成形により、信頼性の高い小型部品が必要な医療機器、精密機械・電子機器分野のニーズにも対応します。
また、500mm角の大型部品や1,000mmの長尺部品の2色成形にも対応しており、豊富な実績がございます。
大型部品の樹脂成形には、製品サイズに応じた高い型締め力を持つ成形機が不可欠です。単色成形では数千トン級の成形機を持つ企業も多いですが、2色成形となると800トン級を保有する企業は稀です。
当社は800トン級の2色成形機を筆頭に、大型2色成形専用機を20台以上保有しています。そのため、1000mm級の大型2色成形加工部品にも、形状によっては対応可能です。長年の実績で培ったノウハウを活かし、大型部品でも高品質・低コスト・短納期を実現いたします。
2色成形加工のプロによるQCDを向上させる設計・開発提案
世の中には数万種類もの樹脂が存在し、用途や環境に最適なものを選ぶのは至難の業です。
そこで当社では、お客様のご要望を丁寧にヒアリングし、QCD向上に貢献できるよう、材料提案、工法転換、形状変更など、様々な角度から最適なご提案をさせていただきます。
「2色成形加工を採用したいが、材料の融着が不安」「形状的に難しい部分の成形性を事前に確認したい」といったご要望にも、柔軟に対応いたします。 当社保有の試作型「デザインプレート」を活用することで、本型を起こす前にプレート形状で融着性や形状をご確認いただけます。
私たちは、ただ依頼通りに製品を製造するのではなく、お客様の期待を上回る製品を提供することに情熱を注いでいます。
デザインプレートについてはこちら
2色成形品の金型設計~射出成形、組立・検査まで一貫対応
大型2色成形.comでは、金型設計・製造から射出成形、そしてアッセンブリまでを一貫して承っております。
当社の強みは、金型設計時に実施する流動解析です。ゲート位置解析、ヒケ変位解析、冷却解析、反り変形解析、繊維配向解析など、多角的な解析を通して成形時に起こりうる不良リスクを事前に予測。金型設計の段階で対策を施したり、製品形状を修正したりすることで、不良品の発生を未然に防ぎます。
さらに、社内でのアッセンブリまでの一貫体制により、リードタイムの短縮を実現。全体工程を俯瞰した設計内容の見直しやご提案も柔軟に行うことが可能です。
まとめ
当社では、これまで多くの2色成形製品を手掛けてきた実績から、材料ごとの特性を熟知し、最適な組み合わせを提案することが可能です。例えば、自動車の内装部品や精密な光学部品など、剥離が許されない重要な部品においても、高い信頼性を実現しています。
2色成形における剥離を防ぐためには、材料の特性を正確に理解し、適切な組み合わせと成形条件を設定することが不可欠です。
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